ミナミまちある記 Minami Walking Report

小説「道頓堀川」の足跡を辿って
宮本輝作の小説「道頓堀川」は道頓堀川界隈を舞台にした小説です。時代設定は昭和44年~45年頃だろうか…。物語は、道頓堀川に面した「リバー」という喫茶店を舞台に、喫茶店を経営する武内、喫茶店の二階に下宿している邦彦、武内の息子政夫等を中心に展開されます。

大阪は八百八橋といわれますが、
この小説には多くの橋が描かれています。特に道頓堀川には多くの橋が架かっています。「戎橋の次が道頓堀橋……、西道頓堀橋、幸橋となるんやけど、そのへんの橋に立って道頓堀川をながめていると、人間にとって何が大望で、何が小望かわかってくるなァ」「邦ちゃんも、いっぺん幸橋の上から道頓堀を眺めたらええ。昼間はあかんでェ、夜や、それもいちばん賑やかな、盛りの時間や」(小説「道頓堀川」)

武内の言葉に誘われるように私は幸橋を訪ねてみました。
 真っ暗で人影もまばら、ぼんやりと道頓堀のネオンが見える寂しい所でした。 「川には光はなく、それは歓楽街に伸びて行く底深い一本の道に見えた。道は橋々をくぐって後方の、遠い高層ビルのほうにまで続いている。なるほど、自分はあんなところで生きているのかと邦彦は思った。あんな眩い、物寂しい光の坩堝の中で生きているのか。 実際に邦彦が幸橋から道頓堀川を眺めると、人気のない一艘の満艦飾の船みたいに見えた。確かに、人ごみや喧騒などはまったく聞こえない別世界に見えた。自分には関係ない場所のように見えた。しかし、その場所から離れる事はできない。」(小説「道頓堀川」)

武内や邦彦の足跡を辿るために道頓堀川界隈を散策してみました。
「太左衛門橋のたもとにはちょうど交番所もあったので、少し捜して親がみつからなければ、そこに連れて行こうと武内は思った。」(小説「道頓堀川」)太左衛門橋のたもとに実際に交番所がありました。交番所を見つけた時、小説の世界が現実の世界として立ち上がってきました。

私も邦彦と同じように法善寺への細道を歩いてみた。
「『邦ちゃん、煙草を買うて来てくれへんか』 聞こえなかったはずはないのに、邦彦は武内の言葉を無視して法善寺への細道を歩いて行った」(小説「道頓堀川」)私も邦彦と同じように法善寺への細道を歩いてみた。するとあたり一帯に仄かな香の匂いが漂っていた。「月の法善寺横丁」の歌碑がある角を曲がると細い路地になっている。匂いに誘われるように路地を進むと水掛不動尊が現れた。苔むしたお不動さんに手向けられた線香の煙がゆらゆらとたなびいていた。

大阪は「ふぐ」の町
小説「道頓堀川」の足跡を辿ってみて、大阪は「ふぐ」の町である事を再認識しました。全国的に約6割が消費されているといわれる大阪。特に道頓堀川界隈では「ふぐ」セットがお値打ち価格で食べられる。やっぱり大阪は食い倒れの町だ。  小説「道頓堀川」は1982年に松竹で映画化されました。まち子役を松坂慶子、邦彦役を真田広之が演じています。

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